【第9回 吹田の歴史】とある川面墓地のお地蔵さん──言い伝えに残るその来歴

「吹田の歴史」シリーズ、今回お届けするお話は「川からやってきたお地蔵さん」です。
 
……ドウイウコト?

吹田市有川面墓地とは?

現在吹田市が管理する五大公営墓地の一つ、「吹田市有川面墓地」は大正12年(1923年)8月16日に吹田町(当時)が管理運営を始めました。
 
 
川面墓地は吹田村時代から数百年に渡り亡き人を祀る場所として、現在も運用されている歴史的な場所であり、江戸時代に建立されたお墓も数多くあります。

お参りする人がいなくなったお墓

一方、その長い歴史の中で祀る人がいなくなった、いわゆる「無縁仏」と呼ばれるお墓も少なくありません。
 
 
川面墓地の無縁仏は平成初期に一部整理が行われ、いわゆる「魂抜き」がされた墓石はそれ以前に行った分(墓じまいによるものも含むと推測)も含めて二箇所にまとめられました。
 
写真左には「無縁霊」の文字が見えます。
 
 
しかし、今なお敷地内に無縁仏は多数あり、さらなる整理をおこなうには膨大な予算が必要になることから「進めたくてもなかなか進められない」という実情もあるとのことです。

井戸前のお地蔵さん

 
川面墓地の北側出入口、バケツ置き場になっている古い井戸(跡地)の奥にお地蔵さん(地蔵菩薩)がいらっしゃいます。
 
形状は「舟形地蔵」と呼ばれるものでしょうか。かなり古いものと見受けられますが文字は確認できません。
 
 
ある日、ふとこのお地蔵さんが気になってお参りに来られる方、特に年配の方に尋ねてみましたが「多分無縁仏だろうけどわからない」という回答が続きました。
 
 
雑草が生い茂る時期になるとお地蔵さんを視認することが難しくなります。
 
叔母からもお地蔵さんの話は聞いたことないな。自分が子どもの頃からここにあるけど、もし地域にまつわるものだったら叔母は率先してお世話をしていたはず。──地域の方
「井戸が現役だった時に落ちて亡くなった子どものお墓では」という説も出ましたが推測の域を出ませんでした。
 
その最中「ここは吹田市の管理だから、市に掛け合ってみてはどうか」というご提案をいただき、吹田市役所の担当部署窓口へ向かい、職員さんに事情を説明しました。
 
個人情報に厳しい時代、門前払いになっても当然のことと思っていましたが、詳細をお伝えしたところ、親切丁寧に記録を調べてくださいました。
 
 
該当の古いお墓は所有者不明です。同じ状況のお墓は敷地内に数多くありまして、大正時代に公営墓地として吹田町が管理を引き継いだ段階で既にわからない状態だったかもしれません。──吹田市役所
記事冒頭の川面墓地にまつわる一連のお話はこの時に教えていただきました。
 
今のように区画がはっきりしていればそれに沿って墓を建てる。そうでない場合、隙間さえあればそこにどんどん建てる。最初は目印の石だけ置いてね、あとからするんだよ。もちろん、そんなことを続けたら所狭し、誰のかわからない墓も増えるだろうね。その当時は持ち主が「これはウチの墓」と口頭で伝えたと思うよ。きっと申告がなかった墓が今に至るんだろうね。──旧吹田村のとある旧家の方
その後も「もうわからないだろう」と思いつつ断続的に川面墓地で聞き込みをしていたある日、先述とは別の旧家の方とお話する機会があり、尋ねたところついに証言を得られました。
 
河川敷で見つかったのをここに運んだ、と聞いてるよ。──旧吹田村のとある旧家の方

とある旧家に伝わる言い伝え

詳しいことはわからないけど、河川敷でお地蔵さんが見つかった時、そのままにするのもどうかと思った人がいたんだろうね。──旧吹田村のとある旧家の方
水道の近くという目立つ場所にあるのでお地蔵さんの存在そのものを知る人は多く、少なくとも60年以上前からここにあるようです。
 
 
風化で朽ち果てたちゃんちゃんこの紐だけがお地蔵さんの足元に残っていることから、一時期は誰かがお世話をしていたのだと思います。ただ、それも相当昔ではないかと考えられます。
 
いつから河川敷にあったのか、別の場所から流されてきたのか、どのような経緯で建立されたのか──まだまだ謎の多いお地蔵さんですが、縁あって川面墓地にやってきたお地蔵さんは今日もお墓参りの方と墓地に眠る方を見守っています。
 
お地蔵さんを通じてまた一つ吹田の歴史を知ることができた私は、お礼としてお地蔵さんの周辺を清掃しました。

形状が近い周辺地域のお地蔵さん

 
かつて吉志部神社(岸部北4丁目)の御旅所だったといわれる名次神社(岸部中1丁目)の境内に、ほぼ同じ姿のお地蔵さんがいらっしゃいます。
 
 
旧吹田地域の旧田中町(現在の元町)に位置する天照皇大神宮 鎮守社にも類似した姿のお地蔵さんがいらっしゃいます。
 
読者のみなさまは地元の言い伝えをご存知ですか?

後日談

 
取材から数ヶ月後、井戸前のお地蔵さんにお花のお供えがありました。

スペシャルサンクス

  • 吹田市有川面墓地・井戸前のお地蔵さん
  • 名次神社のお地蔵さん
  • 天照皇大神宮 鎮守社のお地蔵さん
  • 地域のみなさま
  • 吹田市役所 環境部 環境政策室のみなさま
  • 吹田川面町歴史研究会
<「ちょい足し」吹チャン!>
 
今回の記事とあわせて、「歴史」つながりのこちらの記事も読んでみてください。

【第8回 吹田の歴史】三宅村を救った山田村の八丁池──吹田市にある茨木市の飛び地

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